ブリティッシュ・アメリカン・タバコ、PwC、アルカテル・ルーセントなど、数々の有名外資系企業のファイナンス部門で活躍してきた内山さん。投資の効率性を分析したり、タックス・プランニングしたりと、会社が経営していくのに、なくてはならない仕事を担ってきました。そして、現在は、舞台をニュージーランドに移し、そこでご自身の会社JAT Consulting Co.Ltdを設立。『やはり、日本での仕事とは大きなギャップを感じています。これまでは、グローバル企業に勤務していましたので、会社がある意味働く環境を作ってくれていました。しかし、ニュージーランドで新たに自分の会社を持つとなると、まずは、自分の力で顧客を獲得していかなければならない。最初はそれが、大きなハードルでした。』その後、営業努力が実を結び、今ではニュージーランド国内だけでなく、日本に住むお客様にも仕事の幅を拡げつつ、企業から個人まで、様々なお客様の会計・税務問題を解決するコンサルタントとして活躍しています。さらに、所属している日本相続コンサルティング協会の仲間と、相続税に関する書籍を今年中に出版予定です。
そんな仕事に邁進している内山さんですが、意外にも、移住のきっかけは仕事ではなく、子どもの成長環境を考えたことからでした。『私自身は、どちらかというと日本に住みながら、外資系企業に勤務し、グローバルな環境で成長していくことに魅力を感じていました。しかし、子どものことを考えると、このまま日本にいて、日本の教育システムの中で育てるのが本当にいいのか?と考え始めたのです。日本の教育システムの良い点は、横並びの教育でみんな同じくらいのレベルが得られ、そこそこの人材を数多く排出できるということ。そして、日本に住む限り、どこに行っても日本語でやり取りされ、お互いに理解できる阿吽の呼吸のようなものができること。それはそれで良い部分も多いのでしょうが、これでは考え方が似たり寄ったりになります。それよりは様々なバックグラウンドを持った人たちが大勢いる環境で生活をし、刺激を受け、いろんな感性を取り入れながら大きくなって欲しいと思ったのです。また、日本では、小学校→中学校→高校→大学→就職という流れを、受験や偏差値などのレールで敷かれてしまっている感じが否めません。それよりもっと、自由に、自分の気持ちを大事にして育って欲しいと考えたとき、日本でそれを実現するのは難しいと思いました。実は、私は、日本の教育システムに限れば中卒なんです。途中で「レール」を抜け出したからこそ、ある程度、自由な発想のできる人間になれたのだと思っています。日本の友人に、ニュージーランドに移住するというと、とても驚かれるんです。なぜ、良い給料をもらって、楽しそうに暮らしているのに、わざわざニュージーランドに行く必要があるのかと。しかし、私自身が、自由に発想することができたからこそ、ニュージーランドに移住することを考えられましたし、実際に行動できたのだと思います。』どこまでも、どこまでも、子どもから見える世界を想像し、どのように成長していくか考えた末に、自然と出た結論が、内山さんにとっての“ニュージーランド移住”だったのです。
学校選び 決め手は“学校の印象と校長先生の教育方針”
『移住にあたって考えたのは、仕事や生活環境のことはもちろんでしたが、一番は、子どもが移住したときにどうなるか、ということ。どのような学校があって、どのような教育が受けられるのか?子どもにとって住みよい環境なのか?ということは、とても気になるところでした。』と話す内山さん。今年2月、5歳のお子さんが小学校に入学。今では、小学校への送り迎えが内山さんの日課となっています。学校が始まって早2ヶ月、実際にお子さんが学校に通われているのを見て、どのような印象か伺ってみました。『移民国家なだけあって、友達はバラエティー豊かです。いろんな価値観を共有しながら、いろんな子供たちと切磋琢磨して育っていってくれたらと、当初思うところはクリアできたかと思います。』
ここで、内山さんのお子さんが5歳で小学校に入学されたと聞いて驚かれた方も少なくないと思いますので、ニュージーランドの小学校事情について少しご紹介します。ニュージーランドの初等教育制度では、6歳から11歳までの子供たちは義務教育課程に属し、小学校(Primary School)に通います。しかし、慣例的に、5歳の誕生日を過ぎると小学校へ入学するため、同学年に在籍していても年齢が若干異なる場合があります。また、日本と同じように学区制をとっている学校と、学区制ではない学校があるので、教育方針や費用を見る前に、一度ご確認が必要です。
学校選びについて、内山さんは、まず、家から車で10分以内で行ける学校を探すことにしたそうです。『カリキュラムはあまり見ませんでした。それよりも学校の印象に注目しました。校長先生と話をして方針がいいなと思えたり、いろんなタイプの子どもたちがいるところがいいなと思って。ニュージーランドでは、日本のように文科省が教育方針を決めているのではなく、校長先生がその学校の教育方針を決めています。今息子が通っている学校は、教育方針がしっかり持てている印象でした。当日、学校説明をしてくれた副校長先生も信頼をもてるような感じの人柄で、子供たちにとても好かれている様子でした。5〜6校見ましたが、子供たちが副校長先生にまとわり着くように駆け寄ってくるのは、この学校だけでした。それがすごく印象的で。“この学校だ”と直感しました。』パンフレットだけでは伝わらない部分を、実際に訪ねて肌で感じること。これも、個性的な学校が多いニュージーランドにおいて、学校選びに重要なポイントの一つです。
難航した“住まい選び”
まずは家を決め、そこから通える学校を見つけるという流れで予定していたと話す内山さん。しかし、実際に着手してみると、家を手に入れるということが意外と難しいということに気づかされたのでした。
『ニュージーランドに来てから、家を探し始めました。探していたのは賃貸物件。日本では、賃貸物件は早いもの勝ちですが、ニュージーランドの場合、大家さんが候補者の中からいいなと思える人を選び、住人に決める、というスタイルでした。そのうえ、競争率も高い。そのため、オープン・ホームのとき、30分前からスタンバイして、大家さんに意欲をお見せするつもりでしたが、「こんな早くに来る人は初めてだ」という感じで、逆に迷惑がられてしまいました。見学の後、「ここに決めます」と言ってすぐ応募しましたが、後日、大家さんから「他の人に決めました」との連絡が。確かに、住人にするなら、ニュージーランドで生活経験のない人より、経験のある人の方がいいのは明らかです。そこに焦りを感じていました。次に良い家が見つかったとき、不動産会社の女性から「銀行口座の残高を見せてみてはいかがですか」といわれて、そのアドバイス通り、大家さんにニュージーランドの銀行口座の残高証明を見せたんです。すると、それが効いたのか、すぐOKが出ました。これにはすごく感謝しています。』異国の土地に来て、住む家がなかなか決まらないというのは、なんとも心細いものです。そんな中、内山さんに差し伸べられた救いの手。これが家を決める大きな一助となりました。しかし、日に日に変わるニュージーランドの住宅事情です。私どもでは、家の下見や購入サポートなどの不動産サポート・サービスを提供しております。ご不安なときは、お気軽にお問合せください。
ニュージーランド移住を考えているパパ・ママへ
ニュージーランドへの移住を考えているパパ・ママへ、何かエールを送るとすれば?そんな質問をすると、内山さんはこうおっしゃいました。
『このインタビュー記事をご覧になっている方は、少なからずニュージーランドへの移住を考え始めている方だと思います。移住を考え始めた理由はみなさんそれぞれでしょう。しかし、みなさんのゴールは家族の幸せであることは共通した思いだと思います。とくにお子さんをお持ちで移住を考えているパパ・ママはたくさん不安を抱えていらっしゃると思います。ニュージーランドに移住したら、仕事はどうなるのか?英語はどうする?子供を現地の学校に入れて、本当に大丈夫なのか?移住が誰にとっても正しい選択肢だなんて、もちろん言えません。ただ、私たち親にとって、子供に生きる上での選択肢を増やしてあげることは、とても重要じゃないかと思っています。
日本だけでしか生活できない、我が息子、我が娘。
世界のどこに行っても生きて行ける、我が息子、我が娘。
私と妻の希望は後者でした。』
人は子の親となったとき、今まで考えもしなかったことを、あれこれ真剣に考えたりするものです。『この子に合った環境は?教育は?』『このしつけ方で間違ってないかしら?』と。日々、試行錯誤の繰り返しでしょう。そんな中、子どもたちは、自分の置かれている環境から目一杯の物事を吸収し、ときには、親を驚かせるほどの成長を見せることもあります。子どもの可能性の大きさを、誰にはかり知ることができたでしょうか。そしてその一つ一つの成長が、私たち親の気持ちを動かす大きな原動力になっているのは明らかです。
≪Extra企画≫内山さんの奥様に聞きました!〜NZ主婦生活〜
家事に育児に忙しい主婦にとって、生活環境を知ることはとても重要!ということで、内山さんの奥様にニュージーランドでの生活について伺ってみました。
『日本での生活と大きく異なるのは、やはりどこに行くにも車での移動になるところです。買い物や子供の学校の送迎も車ですし、坂が多いこともありちょっとそこまでの距離でも歩いて行くことがほとんどないので、慢性的な運動不足が悩みの種です。でも、それを解消できる近場のトレッキングコースやちょっとした散歩道はどこにでもあるので、結局は自分のやる気次第なんですね(笑)。
食べ物については、中国を始め韓国やインドなどアジア系の移民の人々が多いので、日本で慣れ親しんだ食事は比較的容易に作れるし、外食でも食べることができるのは助かります。とはいえ、何でも売っているわけではないので、ないものは自分で作る!というのが、ニュージーランドに住む、日本人の方々の合言葉のようになっていますね。
ニュージーランドに来て良かったと思えるところは、子どもが何にも縛られることなくのびのびと生活できていることです。わが家はまだ子どもが5歳なのですが、こちらではもう小学生です。英語はまだ話せませんが、移民の多いお国柄、学校の先生もクラスのお友達もごく自然に受け入れてくれて、本人は楽しく学校生活を送っているようで、親としてはとても有難く思っています。
もちろん、我々大人も、自分から歩み寄れば懐を開いてくれるニュージーランドの人達です。まだまだ努力は必要ですが、これからも様々な経験をプラスにしてここでの生活を充実させていきたいですね。』ぜひ、ご参考ください。